※現代パロまたは転生ネタ。正直どちらでもいいです←
ナナリーは健康です。ロロと双子。
愛し愛され。それが幸せの根源。
外からは小鳥が囀り、カーテンの隙間から洩れ出た柔らかな光がある建物の一室に差し込んだ。
アッシュフォード学園内に建てられたクラブハウス。
クラブ活動や生徒会、稀にパーティー会場として使われるこの建物には、特別にアッシュフォードの学生である三人家族が住んでいる。
中でもクラブハウスの主――ルルーシュ・ランペルージは、かなり朝が弱い。
「……ん、」
外から紛れ込んだ光が顔を照らすが、ルルーシュは小さく声を上げるだけで起きる気配が全くない。そんな刺激では、ルルーシュを覚醒に到らせるには到底及ばないのだ。
だが、しばらくしてパタパタパタと廊下を走る音が聞こえると、ルルーシュは僅かに目元を動かす。
しかしこれもまた睡魔には勝てず寝入ってしまったルルーシュの部屋の前で、ピタリと足音が止まった。
ゆっくりとドアが開かれる。音など出ぬよう、慎重に。
何とか静かにドアを開けることに成功した侵入者達は、そろりそろりとベッドへ近寄った。
穏やかにすやすやと眠る、部屋の主の姿。
その様子からぐっすり眠れているな、と判断し、二人は顔を見合わせ嬉しそうに微笑んだ。
そして、
「お兄様、おはようございます!」
「兄さん、おはよう!」
大好きな兄へと抱き着いた。
突如襲った衝撃に、うっとルルーシュは呻き声を上げた。
反射的に飛び付いてきたものを腕で支え、重たい瞼を無理矢理開ける。
「……ろろ…ななりー…?」
常のような覇気など全くない声に、ロロとナナリーは元気良く答えた。
「ねぇねぇお兄様、おはようございますってば」
「朝の挨拶はちゃんとしなきゃ、でしょ?」
「……あぁ、すまない…おはよ、う…?」
と、ここで“ん? 此処は俺が謝る所か?”とルルーシュの未だ若干機能の鈍い脳内で疑問符が浮かんだが、まぁいいかと敢えて考えないようにした。代わりに新たに浮かんだ疑問へ意識を向ける。
「しかしどうして、今日は二人とも早いんだ。いつもは……っあぁ!」
何気なく目に入れた時計。その針が指し示す時刻にルルーシュは驚愕した。
午前八時。いつもは最低でも六時に起きて朝食の用意をするのだ。無論低血圧故一人では起きれないのでこの目覚まし時計を使って。今日学校がないのは幸いだが、それでも朝食は作らねばならない。
いつも確実に起きれていたのに、今日は全く気付けなかった。何故か。目覚まし時計が壊れたか、はたまたルルーシュ自身に何か変化があったのか。
そうしてぶつぶつと考え込む兄の袖を、ナナリーが控えめに引っ張った。
「ごめんなさい、お兄様。私達がお兄様の時計のアラームを鳴らないようにしましたの」
「は?」
「兄さんが寝てるすきに、こっそりと……」
「どうしてそんなことを……」
わけが分からないといった体で問う兄に、ロロとナナリーは顔を見合わせるとルルーシュの腕を取った。
早く早くと急かされて階下へ行くと、不意に香ばしいかおりが鼻腔を擽った。
そのかおりの根源は、毎日三人で食事をするリビング。
リビング内のテーブルを見れば、やはりというか、数多の色がテーブルを彩っていた。
こんがり焼けたトーストにはジャムを添え置き、ベーコンエッグを乗せた皿にはソーセージ……と、スクランブルエッグ。トマトやレタス、コーンなどの色彩が鮮やかなサラダもある。バスケットには、マフィンとべーグルも用意されていた。
ちょっと端っこが焦げてるだとか、なんで卵料理が二つもあるのだろうだとか思いはするものの、それらを差し引いても十分立派な朝食である。
「兄さん、突っ立ってないで早く座って」
「あ、あぁ」
言われるがままに椅子へ腰を下ろすと、ロロがベーコンエッグの乗った皿を近付けてきた。
「えっと、その……これ、僕が作ったんだけど……」
躊躇いがちに言うロロの瞳には、不安げな色。
――あぁ、なるほど。
即座にロロの心情を悟ったルルーシュは、ロロの頭を撫でてからフォークを口に運ぶ。
「……うん、美味しいよ、ロロ」
お世辞でもなく、ただ思ったことを優しく微笑んで言えば、ロロは途端にぱぁっと表情を輝かせた。
「ほんと!? やった!」
「まぁ! ロロばかりずるいです! お兄様、私のスクランブルエッグもっ!」
負けじと皿を差し出してきたナナリーのスクランブルエッグも食べて「美味しいよ」と微笑めば、こちらも嬉しそうに飛び跳ねた。
「こら、喜ぶのはいいが、あんまりはしゃぐと埃が舞ってしまうよ」
「「はーい」」
ルルーシュに諌められ大人しくなったが、余程嬉しいのか二人は満面に笑みを浮かべている。
「ロロと計画していたんです。いつかお兄様をゆっくりさせて差し上げましょうって!」
「まだ僕達に出来ることは少ないけど、もっと家事を覚えてもっと兄さんが楽になれるよう頑張るから!」
「……そうか、ありがとう」
屈託ない笑顔で言われた言葉に、ルルーシュは胸の内が温かくなるのを感じた。同時にじん、とするものがあったけれど、それは男として――というより、兄として見せてはならぬと押し込めて。
「さぁ、ロロとナナリーも座って食べよう。冷めてしまう」
「はい! ……あ、」
勢いよく返事をするナナリーだが、不意に何かに気付いたように母音を紡ぐと、ロロへと視線を向ける。
ナナリーの視線をうけてすぐさま察したロロは、キッチンへと向かっていった。
何だろうと思うが、次のナナリーの一言で理解する。
「お兄様、お飲みものは何に致しましょう?」
――本当に、自慢の妹と弟だな。
「じゃあ、コーヒーを頼もうかな」
ルルーシュは殊更優しい声で紡いだ。
「兄さん、今日は何か予定あるの?」
朝食後、三人の連携プレイですぐに皿洗いを終わらせのんびりと紅茶を飲んでいると、不意にロロが訊いた。
そうだな、とルルーシュは宙を仰ぐ。
今日は晴天だからシーツを干そうか。食材はそれなりに揃えてあるが、チラシを見て安売りをしていたらスーパーに行くのもいい。あと掃除も――ん?
「……忘れてた」
「何が?」
「何がですか?」
「今日、スザクとジノと出掛けるんだ」
「「えぇー」」
昨日帰り際に約束したことを口にすれば、ロロとナナリーはあからさまに残念そうな声を上げた。
「折角今日はお兄様と遊べると思っていましたのに……」
「本当だよ。しかもよりによってあの二人……」
あっという間にしゅんとしてしまった二人にルルーシュはついつい約束を放り出してしまいたい衝動に駆られるが、流石に無下には出来ないだろうとぐっと堪える。一度約束をしたことは何があっても貫き通す主義だ。
「ごめんな。明日は予定がないから……」
「兄さん忘れたの? 明日は会長さんが提案した“一日全校生徒強制ガーデニング”の前日準備だよ」
「……あぁ、そういえば」
爽快な物言いで語ったミレイを思い出し、ルルーシュはすっと目を細める。
毎回毎回思いつくたびに会長であるミレイはとんでもない企画をやるが、その中でも今回はかなり面倒臭い部類だ。体力を使うジャンルは得意じゃない。いや、劣ってるとかじゃなくて、ただ得意分野じゃないだけ。大体男子も女子も体力馬鹿が常に周りにいれば、多少卑屈になってしまうものだろう。……うん。
「…確かに、ゆっくりできないな」
「でしょ?」
「まぁいいじゃないですか。来週遊べばいいですし」
ナナリーがおっとりと言う。
来週。そうだな。
「じゃあ来週な。それでいいだろう、ロロ?」
「……うん」
「そう膨れるな。今日は帰ってきたら勉強教えてやるから」
「……分かった、約束ね」
ああ、約束。
ふわりと、三人で笑う。
同時に室内にはチャイムが響き、玄関からはかすかに聞き慣れた声がした。
愛しき日々に口付けを
笑い合える日々を噛み締めて、僕らはまた一つ約束を刻む
二、三週間前くらいに書いて放置していたものです。多少加筆修正をしてアップしました。約束出来るって、本当はすごく幸せなんだろうなと思って。
ちなみに何故卵料理が二つかというと、朝食で一番難しい料理だからです。お兄ちゃんに褒めてほしかったのでどちらもフライパンを譲らなくて仕方なく二つ……という感じ。
本当はジノとスザクも出す予定だったんですが、本編で立て続けにナナリーやらロロやらとランペルージ弟妹が亡くなってしまったので、もうこの二人いいや!とばっさり切り捨てました。……うん、ごめんなさい。
次生まれ変わったらロロもきっとルルに心から愛されるよ!ナナリーだって大切にしてくれるよ!と思いを込めて。
あと、ロロとナナリーは双子なのできょうだいらしく張り合ってもらいました(笑)ナナリーも普通に育てばとっても活発な子になったんだろうなぁと思ったので。
他にもゼロとかロイドとかユフィとかとにかくみんな出したかった…。みんな幸せになぁれ!!