※ゼロルル♀+子スザジノロロとの現代&家族パロ。みんな仲良しだけどやっぱりルル一番。
そんなカオスな展開でも良い方はどうぞ。
















「ただいま」

 誰もいないと分かっているはずなのに声に出してしまうのは、その行為がそれほど身体に染み付いているからなのだろう。
 普段は頭が痛くなるくらい騒がしい空間であるからこそ、こうして静けさの中ぽつんと佇んでいると妙な感覚に捕われた。

「……全く、随分慣れたものだ」

 苦笑しながら呟き、ルルーシュは靴を脱ぎ玄関に上がる。
 キッチンのテーブルに手にぶら下げていたスーパーの袋を置きつつ時計を見遣れば、時刻は午後四時を示していた。

 ――もうすぐ帰ってくるな。

 冷蔵庫を開ければ昨日作った人数分のプリン。少し遅いおやつはこれでいいだろう。





 ルルーシュ、そして彼女の片割れであり兄でもあるゼロに家族が増えたのは、一年前のことだった。
 両親に捨てられた、または何らかの事情で身内を失った子供が集まる孤児院。
 そこを設立したアッシュフォード家は母の代から随分親交を深めていて、それなりに資産家だったランペルージ家もよく援助を行っていた。
 流石に両親を亡くしてからは援助をすることはなくなったが、それでもアッシュフォード家当主の孫であるミレイとは学校が同じ且つ生徒会にも所属しているだけあり未だ交流があって。
 二人があの子供達に出会ったのも、用事があって孤児院を訪れたミレイに同行していたからだった。

「今日は何にしようかな。じゃがいもが安売りで買い過ぎたから、ホタテも加えてホワイトグラタンにでもするか……」
「ただいまー!!」
「ただいまー!!」

 つらつらと頭の中で夕食の献立を思い浮かべていると、不意に玄関から元気にも元気すぎる声が聞こえてきた。ついでどたばたとけたたましい音を立てて廊下を駆ける音。この瞬間、我が家の平穏は崩れ去った。

「あいつら……」

 はあと一つため息をついて、ルルーシュは彼らが来るであろうリビングへ向かった。
 すると予想通り廊下からリビングへ続くドアが乱暴に開かれ、ぴくりとルルーシュの眉が吊り上がる。

「おいスザク、ジノ。元気がいいのは構わないが、それでももう少し落ち着いて――っほわあ!」

 子供が活発なのはまことに良いことではあるが、だからといって行きすぎればそれはただの非常識だ。必要最低限の常識、マナーは身に付けてもらわねばならない。
 そう思って仁王立ちに腕を組み苦言を呈するが、肝心のスザクとジノはそんなこと知ったこっちゃねぇってか聞いてねぇとばかりに一直線にルルーシュへと飛び付いた。
 ただでさえ非力なルルーシュが子供二人に耐え切れるはずもなく、そのまま派手な音を立てて後ろに倒れ込む。
 背中を襲う衝撃に若干涙目になりつつ、ぶんぶんと尻尾を振るう幻覚さえ見えてしまえそうな満面の笑みでこちらを見つめる二人を睨め付けた。毎回毎回ルルーシュの努力を無に還してくれることに対する少しの恨みも込めて。

「お前ら……だからそうやって抱き着いてくるなと……!」
「ただいまールルー」
「ただいまー」
「ああおかえり……って人の話を聞け!」

 怒りつつも律儀に返事をしてしまうルルーシュは流石と言えよう。

「大体私は姉なんだからちゃんと呼べと言っているだろう!」
「えー……だって、」
「なぁ?」

 きょとりと見つめ合ったスザクとジノは、再びルルーシュに顔を向けると彼女を脱力させるに十分な言葉を放った。

「ルルはルルだし」
「だよなぁ。ルルーシュはルルーシュだし……」
「………」

 なんだその答えは。

 思わず出そうになった言葉を、ルルーシュはなんとか飲み込んだ。ここで反論すればさらにこの子供達はぎゃあぎゃあ騒いで、反省どころか自分の頭が痛くなるだけであろうことは過去に経験済みなのだ。
 とりあえずおやつをチラつかせてこいつらを退かしてからか、と判断したが、そこでふと気付いた。

「おいお前ら、ロロは?」

 帰る時は三人で、と言い聞かせているのに、末っ子のロロがいない。
 ルルーシュの問いに、スザクとジノは「あ」と声を上げた。

「置いてきちゃった」
「……お前らなぁ」
「だってしょうがないじゃん。ロロ走るの遅いし」

 いや、お前らがバカみたいに体力が有り余ってるんだ。ロロはいたって普通だ。

「とにかくロロを迎えに行ってこいってほわぁっ!」

 腰に巻き付いていたはずのジノの手がいきなりスカートをめくりそうになって、ルルーシュは再び素っ頓狂な声を上げてしまった。

「何するジノ……!」
「いや、ルルーシュの生足相変わらず綺麗だなとか」
「何処の親父だ!」
「あ、ジノ、僕も」
「便乗するなスザク!」

 何処で教育を間違えた!? と悲鳴じみた言葉を胸中で叫ぶ。
 めくられてなるものかと必死にスカートを抑えるが、抵抗すればするほど人間力が入るというか、子供ならそれも尚更で、ジノとスザクも負けじと本格的に身を乗り出してきた。
 しかし長く続くかと思われた攻防は、じつにあっけなく終わりを告げる。

「……何をしている、お前ら」

 不機嫌そうな男の声と共に、華奢な身体に纏わり付いていた子供が不意に浮き上がる。
 はっと見上げれば、ルルーシュの片割れが子供達の襟首をむんずと掴んで持ち上げていた。

「ちょっとゼロ! 僕達の扱い何だかひどくない!?」
「そうだ! 離せゼロっ!」
「やかましい。全くお前らは、油断も隙もあったものじゃない」

 文句を言うスザクとジノを一喝し、ゼロは心配そうにルルーシュへ目を向けた。

「大丈夫かルルーシュ、怪我は、」
「平気だ。ありがとう、ゼロ。しかし早かったな。今日生徒会の仕事は?」
「自分の分は終わらせたさ。リヴァルは泣き付いてきたが無視した」
「ひどいな」
「自業自得だ。いいだろう別に。途中でロロとも合流したし」
「え?」

 と、ここでひょいとゼロの後ろからロロが姿を現した。ゼロのズボンを掴み、窺うようにこちらを見ている。

「ロロ! よかった、二人が置いてきたというから心配で……」
「ごめんなさい姉さん。……ただいま」
「おかえり」

 おいで、というように腕を広げれば、逡巡しながらもロロは近付いてきてくれて、ルルーシュはそっとロロを抱きしめる。
 ロロは一瞬びくりと身体を震わせたが、拒絶することなくおずおずと抱き返した。その反応にルルーシュは嬉しく思う。ロロは心の傷が深かったせいか、以前は近寄ることすらしてくれなかったから。
 しかし面白くないのが未だぶら下がっている二人なわけで。

「ルル、ロロばっかりずるい!」
「俺らの時は怒ったくせに! ゼロもなんで止めないわけ!?」
「ロロはいいんだよ。お前らと一緒にするな」
「ひどっ!」
「ふびょーどーだー。さべつだー」
「やかましい!」

 どうでもいい言葉ばかり覚えてきやがって、とゼロは心中で毒吐く。こいつらのルルーシュに向ける感情は絶対に家族へ向けるそれではないのだ。まだ二人に自覚はないが、自覚した将来はルルーシュを狙う狼となりかねない。今のうちになんとか対策を練らねば。

 ……別にロロが羨ましいとは思っていないぞと、ゼロは誰に言うでもない言い訳を胸中で呟いた。









Funny family.




カオス! でも楽しかった!(爆)
ちなみに隣の家はロイドさん。
さらに言えばゼロの口癖は「やかましい」(スザとジノ限定で)
ルルは生徒会に所属してるけど、どうしてもっていう時や彼女自身が時間がある時だけ参加して、基本的には家の家事の為に参加せず帰ってきます。


2008.9.29