「ルルーシュ!起きろ、朝だ!」
そう言いルルーシュの部屋に現れたのは、彼と全く同じ顔の青年。名はゼロ。
ゼロは全く起きる気配のないルルーシュにため息をつきベットに歩み寄ると、そこで寝入っている青年の肩を掴みゆさゆさと揺さぶった。
「ほら、起きろルルーシュ。朝飯の時間だ」
「………」
無反応。
直接体に触れたというのに見事にピクリとも動かない。これはもう一種の才能か。
「……仕方ないな」
一人呟くとゼロはベットに片膝をつけ乗り上げた。
そして仰向けに寝ているルルーシュの顔の両脇に腕を乗せ、上半身だけルルーシュに覆いかぶさると、お互いの顔がくっつくギリギリまで近付けた。
「ルルーシュ」
「………」
これも駄目。
ゼロは一度顔を離し、ワインレッドの瞳を眇めると、再び顔を近付ける。ただし今度は耳へ。
そして――
「……っ!」
ピクン、と無意識にルルーシュの体が震えた。
ゼロはルルーシュの耳朶を甘噛みしていたのだ。
そして甘噛みしていた口をゆっくりと耳の裏へ移動させ、今度はそこをペロリと舌で舐めあげる。
すると「ん…」と吐息の漏れる音が聞こえてきて、起きたか?とまた顔を上げる。
だが、
「……すぅ…すぅ…」
「………」
コイツは。
思わず右手を額にあてた。どうやらコイツは眠りの天才らしい。
仕方なくゼロは最後の手段に出た。
ルルーシュの左頬に右手をそっと添えると、ゆっくりと顔を近付け、
触れるだけのキスをした。
だがやはりルルーシュは起きない。
だろうな、とゼロは嘆息して再び口付ける。だが今度はそれだけでは終わらない。
ゼロは自身の舌をルルーシュの口内へと侵入させた(相手が眠っている為、抵抗もされずやりやすかった)
そしてゆっくりと下の歯列をなぞっていく。
「…ん……んぁ…?」
これにはさすがのルルーシュでも起きないわけにはいかない。
ゆっくりと目を開けしばらくぼーっとしていたが、何秒かすると自分が今どういう状況にあるかやっと理解し、寝ぼけていた脳が一気に覚醒した。
アメジストの瞳が大きく開かれる。
「んー! んーー!!」
バンバンとゼロの肩を叩き押し返そうとする。
ルルーシュの舌を搦め捕っていたゼロは少し残念に思いながらも抗うことはなく、ゆっくりと離れていった。二人の間に銀色の糸ができる。
「はっ…ゼ…ゼロ…」
やや息の上がっているルルーシュに、ゼロは清々しく言い放った。
「おはよう、ルルーシュ」
「…いや、おはようじゃなくて……何故普通に起こさない」
朝から疲れた、と呟く弟の肩を抱き、上半身を起こしながらゼロは言った。
「何度名前を呼んでも起きないからだろう。自業自得だ。別にいいじゃないか、キスくらい」
「まぁ確かに小さい頃からしてたが……ってそうじゃない! 舌を入れられたことはないぞ! いくら兄弟で双子だからって…!」
『兄弟で双子』という言葉にズキン、と胸が痛み手を止めるが、それも一瞬のこと。すぐに笑みを浮かべた。
「そうはいっても普通にキスしても起きなかったんだ、仕方ないだろ」
「だから…!」
「ルルーシュは、私とキスするの、嫌か?」
う…、とルルーシュは息を詰まらせた。
別に嫌なわけじゃない。ただ………。
「その…朝っぱらからそんなことされると驚くから止めろって言っただけで、別に嫌いってわけじゃ…!」
言ってる途中にいきなり髪をわしゃわしゃと撫でられる。もちろんゼロにだ。
「ああ、分かってるよ。私達は双子なんだから」
そう、分かっている。
お前が何を考えてるかなんて。
お前が何を思ってるかなんて。
分かってしまうんだ。
お前にとって、私が『大切な兄』でしかないことにも、
分かって、しまうんだよ。
「ほら、いいからさっさと制服に着替えろ。咲世子さんが待ってる」
「ああ、分かった」
ルルーシュはごしごしと目をこすると、ベットから出て洗面所へと向かう。
そして思い出したように声を上げると、くるりと後ろ――ゼロの方を振り向いた。
「ゼロ、俺まだ支度に時間かかりそうだから、先に下に戻っていてもいいぞ」
「……ああ、じゃあそうする」
待ってるぞ、と言い残してゼロはルルーシュの部屋を出た。
しかし下に行くことはせず、今出てきたばかりの扉に寄り掛かった。
チッ、と舌打ちし、額に手をあてる。
「ルルーシュ、お前がそう思っていても、私は―――っ!」
ゼロはその言葉を最後ままで言うことは出来ず、しばらくの間そこに立ち尽くした。
全て分かり合えればいいわけではないんだよ。時には知らなければいいこともある。
書いちゃったゼロルル双子小説…。
実は書いている本人が一番楽しかった!ウキウキしながら書いてました(笑)
ちなみに軽く説明致しますと、一人称ルルは『俺』でゼロは『私』。二人は小さい頃から人目盗んでキスしてましたが、あくまでルルは兄弟とのスキンシップのつもりで恋愛感情はありません。ゼロは…昔はどうだったか分かりませんが、今はあります。
でも鈍感ちゃんなルルは気付かないわけですよー。ゼロは一回くらい襲えばいいのにvv(裏書けないやつが何を言う)
続編…少しでも希望なされる方がいたら書きたいですね。今度はスザクと三つ巴で(笑)