※サンホラのMoira「死せる乙女その手には水月」パロです。エレフ→ゼロ。ミーシャ→ルル。
一応ルルは星巫女ですが、男でも女でもどっちでもいいです←










 ごめん、ゼロ。俺は、誰かを犠牲にしてまで、Moiraには逆らえないんだ。





 目の前には、水面が浮かぶ。
 僅かな風に揺れるそこには、水にあわせて儚く踊る月が映っていた。

 ふと、遠い昔に片割れと語った言葉を思い出す。





『ゼロ。俺は、月が欲しい』
『何故?』
『さぁ、なんでだろう。綺麗だからかな。とにかく欲しいんだ。どうすればいいと思う?』
『どうしようもないだろう。あんな遠くのものを手に入れられるはずがない』
『……そうか、ゼロには分からないんだ』
『何? お前は手に入れられるというのか?』
『まぁな』
『どうやって?』
『……秘密、だ。ただ、まだ俺には手に入れられないとだけ言っておく』
『な……っ。ずるいぞ!』
『あはは。今度教えてやるよ』
『……約束だぞ』
『あぁ、約束』





「ゼロ……」

 約束、叶えられそうもないよ。

「……ごめんね」

 水面を見つめていた視線を、そっと夜空に移す。

「Moiraよ。……この残酷な世界で俺は、」

 美しく咲き誇る華に、なれたのか。

 そう、問う前に、

「――っ!」

 背後から襲う、灼熱の痛み。
 獰猛に身体を駆ける刃は、華奢な痩躯を勢いよく貫いた。

「……ぁ…っ」

 ぐるりと円を描き肉を抉った刃は、ぐちゅりと嫌な音を立てて身体から引き抜かれた。
 足に力は入らず、支えを失ったルルーシュは目の前の水面へと身を投げる。

 全身を覆う水に抱かれ、目を閉じる刹那に垣間見たものは、幼き頃から羨望していた、瑠璃色の月。



 ああ、ゼロ。どうか、悲しまないで。恨まないで。
 過去も、今も、Moiraのくれた、大切な贈り物なんだ。

 だから――、



  †  †  †



「はっ……はぁ、は……っ」

 永遠と続くのではないかと思える平坦な道を、ゼロは走っていた。一分一秒も惜しいくらいに全力で。
 目指すはずっと捜し求めた、己の唯一。この日の為に、自分は今まで生きてきた。

 しかし走っている間中浮かぶのは、神殿にいた巫女の言葉。


『ルルーシュは、自ら生贄になると申し出て、贄の祭壇へ。今頃は、もう……』


「――っルルーシュ……!」

 認めない。そんなこと、認めない。

 今までただルルーシュに会えることだけを信じて旅をして、やっとその願いが叶うのだ。決して認めはしない。そんなもの!

「彼処か……!」

 目前に現れた階段を駆け上がった。長い長いそこを走りきれば、ルルーシュのいる祭壇があるはずだ。

 長い間全力疾走していたからか、階段を走りはじめてからただでさえせわしなく動いていた心臓が悲鳴を上げる。息も荒くなっていくけれど、自分のことに頓着している暇はない。身体の悲鳴をひたすらに無視して、長い階段を一気に駆け登った。

 ついに最後の一段を踏み切り、ゼロは辺りを見渡す。
 そして、

「………あぁ……、」

 声は、震えていた。それは決して、息が乱れているからではない。
 整わない呼吸を気にすることなく、ゼロは歩き始めた。先程の焦燥した走りとは真逆にゆっくりと、覚束ない足取りで。

 やがて湖畔まで歩を進めたゼロは、己の足元を見つめる。
 無造作に落ちたショール。紫色のそれには、似ているようで禍々しい色を放つ赤。
 そして視線をさらに上へと彷徨わせた先に見えたのは、

 水中に揺れる、愛しき片割れの姿。

「……ルルーシュ」

 足の力が抜け、がくりとその場に崩れ落ちた。現実が、理解出来ない。

 何故、片割れが動かない。
 何故、片割れが水の中にいる。
 何故――ルルーシュは、そんなにも穏やかな顔でいる。そんな、綺麗な顔で。

 なんだろう、この喪失感は。この、底知れない絶望と哀しみは。

「ル、ルーシュ……。……ルル……ルルーシュ……ルルーシュ、ルルーシュ、ルルーシュ!!」

 そう、まるで心を引き裂かれたかのような、この激しい痛みは。

「――っうあぁぁあぁぁああぁぁぁあああぁぁ!!」





『ゼロ。俺は、月が欲しい』


 忘れもしない。あれは幸せだった頃。母様と父様。そして何より片割れと共に過ごしたあの幸せな日々で、ルルーシュは突如そう言った。
 その時、ルルーシュは月の取り方を知っていると言って、だが今の自分では取れないとも言って、ゼロがどうするのか聞いたら、今度に、とはぐらかされてしまった。……結局、その“今度”は訪れなかったけれど。


『……秘密、だ。ただ、まだ俺には手に入れられないとだけ言っておく』


「ルルーシュ……手に入れたんだな」

 腕を広げ眠る片割れ。その手には、美しき水月。

「――さようなら、ルルーシュ」

 さようなら、さようなら、私の愛しき片割れ。もう一人の、私。





『ずっと一緒にいような!』
『うん、いようね!』
『ルルーシュ!』
『ゼロ!』





「――Moiraよ、これがあなたの望んだ結果か」

 もしそうだとするのならば、私はあなたを許さない。

「こんな世界……私がぶっ壊す……!」


 世界を見据えるアメジストの瞳には、ぎらぎらとした憎悪の光に満ちていた。










Good bye my love.





やっちゃいました(汗)
この曲を聴いた時、「これ絶対ゼロルルでやりたい!」って思ったんですすいません。
本当は他の曲でも書きたいのですがキャストが……あわない!orz
あ、でもオリオン=スザクだったら、仮に双子の元がアポロンアルテミス双子神とした場合面白くなりますね。ゼロがいい頑固兄ちゃんになれる(笑)あくまで神話の話ですが。
……都合の悪い所は考えませんよ! アルテミスがオリオンをあれしちゃうとか!←ご都合主義!

あ、ちなみに文中で“はな”を“華”と表記しているのはわざとです。一応ルルは女でも男でもどっちでもいいと思ってるので“女”にしたらちょっと問題が……(汗)
それと一応SHパロですが、所々曲とは違う場所があります。月の話だとかちょっとギアスの科白持ってきたりだとか。なのでコンセプトはパロですがMoiraの考察とは違うよということを言っておきます(汗)

では、此処までお読みいただきありがとうございました!


2008.10.11